ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

関の観光・文化

あしあと

    古町遺跡

    • ID:16693

    古町遺跡の紹介

     古町遺跡(ふるまちいせき)は、室町時代後期の鍛冶作業を行った遺跡です。

     フイゴの羽口(はぐち)や金床石(かなとこいし)などが出土したことから、高温に熱した鉄を打ち叩き、短刀などの鉄製品の加工を行っていたと考えられ、「刃物の町・関」の起源や中世の関の様子を具体的に解き明かすことができる重要な遺跡です。

     ここでは、古町遺跡についての解説をはじめ、発掘調査の結果や、現在進めている出土品の調査、分析の結果などを紹介します。

    鍛冶作業(イメージ図)

    鍛冶作業

    ▲鍛冶作業の設備や道具の名前
     (クリックで拡大します。以下同じ)

    発掘調査と調査結果

    古町遺跡の発掘調査

     古町遺跡は関市の中心市街地の南にあり、独立丘陵の安桜山と長良川の支流・津保川に挟まれた台地上に位置します。東側には関川が流れ、対岸には中世に関鍛冶職の惣氏神として信仰を集めた春日神社が所在します。

    古町遺跡位置図

    ▲古町遺跡の位置(図)

    古町遺跡垂直写真

    ▲古町遺跡の位置(写真)

     関市の観光拠点施設「刃物ミュージアム回廊整備事業」が計画されたことに伴い、試掘調査を実施した結果、中世の遺構・遺物が発見されました。そのため、平成30年度に発掘調査を実施することになりました。

    • 調査期間  平成30年7月17日~平成31年2月28日
    • 調査面積  644.298平方メートル

     なお、遺跡名の「古町」は、昭和27年(1952)まで当地で使われていた地名です。

    古町遺跡調査区

    ▲調査区(発掘調査した範囲)

    古町遺跡調査後航空写真

    ▲調査後航空写真(南西から)

    発掘調査の結果

    古町遺跡発掘調査全体

    ▲発掘調査の全体図

    鍛冶作業の遺構・遺物

     発掘調査の結果、室町時代(14~16世紀)の鍛冶作業に関連する遺構・遺物を発見しました。炉跡や焼土を含む土坑(どこう)が多数重なって検出できました。炉の火力を高めるための送風装置であるフイゴの羽口(はぐち)や、炉の底に溜まってできる椀型滓(わんがたさい)が計約160kg出土したことから、鉄を溶かす作業が繰り返し行われたことが分かります。

     ※滓=砂鉄を高温で熱して純度の高い鉄を取り出す際にできる不純物の塊

    フイゴの羽口

    ▲フイゴの羽口(はぐち)

    椀型滓

    ▲椀型滓(わんがたさい)

     そのほかに、金床石(かなとこいし)や鍛錬の際に飛散した鍛造剥片、火花が空気中で冷やされてできる粒状滓も検出でき、鉄製品の加工を行っていたことが判明しました。製品と思われる短刀も出土したことから、刀鍛冶も行われていたと考えられます。

    金床石

    ▲金床石(かなとこいし)

    鍛造剥片

    ▲鍛造剥片(顕微鏡写真)

    粒状滓

    ▲粒状滓(顕微鏡写真)

    <短刀の出土>

    短刀出土状況

    ▲短刀の出土状況

    2区から出土した短刀

       ▲出土した短刀

    2区から出土した短刀

    ▲短刀の分析結果(下段はX線写真)

    保存処理の成果

    ▲短刀の保存処理の成果

     また、鉄器製作(鍛錬鍛冶)のみならず、大型の炉跡が検出できたことから、鍛錬鍛冶の前段階である精錬鍛冶(純度が高い鉄の素材を取り出す鍛冶作業)も行われていた可能性があります。

    小鍛冶跡

    ▲鍛錬鍛冶(小鍛冶)跡

    小鍛冶復元図

    ▲鍛錬鍛冶(小鍛冶)復元図

    鍛冶炉跡

    ▲鍛冶炉跡

    鍛冶炉復元図

    ▲鍛冶炉復元図

    陶磁器などの出土品

     鍛冶作業に関連する遺構・遺物のほかに、14~16世紀の遺物が16,000点以上出土しました。その中には、山茶碗、かわらけ、灯明皿(とうみょうざら)、灰釉皿(かいゆうざら)、鉄釉擂鉢(てつゆうすりばち)を中心とする瀬戸・美濃産陶器、常滑焼大甕(おおがめ)、青磁椀、景徳鎮の青花皿(せいかざら)、銅が付着した取鍋(溶かした金属をすくって鋳型に流し込むための容器)、砥石、銅銭などが含まれます。これらの出土品は、広域にわたる商品流通が行われ、人と物が集まる町として発展したことを示しています。

    出土品(山茶碗)

    ▲山茶碗

    出土品(かわらけ)

    ▲かわらけ

    出土品(灯明皿)

    ▲灯明皿

    出土品(擂鉢)

    ▲擂鉢

    出土品(瀬戸・美濃産陶器)

    ▲瀬戸・美濃産陶器

    出土品(常滑焼)

    ▲常滑焼

    出土品(中国製陶磁器)

    ▲中国製陶磁器(青磁椀など)

    出土品(玩具)

    ▲玩具

    出土品(内耳鍋・羽釜)

    ▲内耳鍋・羽釜

    出土品(砥石)

    ▲砥石

    出土品(砥石)

    ▲砥石

    出土品(渡来銭)

    ▲渡来銭(銅銭)

    まとめ

     建築資材の釘、のこぎり・ノミ・錐などの工具、鎧の小札(こざね)や短刀などの武具といった鉄製品が出土していることから、関町は各地の都市や農村にこれらの製品を供給する鍛冶職人の町として発展し、また、刀を鍛えることができる質の高い技術を備えた職人が刀鍛冶として集住したと考えられます。

     関鍛冶は室町時代の応永期(1394~1428年)に各地の鍛冶が関に移住して成立したと考えられており、古町遺跡は、関鍛冶の起源や中世の関町を探るうえで重要な遺跡です。

    鉄製品

    ▲鉄製品1 保存処理前

    鉄製品

    ▲鉄製品1 X線写真

    鉄製品

    ▲鉄製品2 保存処理前

    鉄製品

    ▲鉄製品2 X線写真

    遺構の露出展示

     せきてらすには、古町遺跡の遺構をガラス張りで露出展示しているスペースが建物内に2ヵ所あります。ここでは、鍛冶作業を行った炉の底(火床=ほど)の跡を見ることができます。

     展示は施設開館時間内に見学いただけます。それぞれの施設の開館時間等は せきてらすのページ(別ウインドウで開く) をご覧ください。

    観光案内所

     観光案内所の北西角のスペースにあります。

     ここでは、上下2層の炉の底面(火床=ほど)を発見しました。下段が古く、上段が新しいです。同じ場所で繰り返し操業を行ったと考えられます。

     上段の炉跡は湿気を除くために、設置場所を掘り下げた後、土質が違う土を交互に埋め戻してから(下部構造)、炉の底面を整えています。

     下段の炉跡は、高温により底面が真っ赤に変色しています。

    遺構

    ▲上段の炉跡と下部構造

    刃物会館

     刃物会館の正面玄関にあります。

     ここでは炉の底面(火床=ほど)が見つかりました。高温により赤く変色していることがわかります。炉の本体は残っていませんでしたが、炉内部から掻き出した焼土粒や炉の底にたまった不純物(椀型滓=わんがたさい)が出土しました。

    遺構

    ▲刃物会館の露出展示部分


    ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます